姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


ババの在処が分かってるんだから警戒する必要もない。

続けて私もなんの駆け引きもなく近江涼介の手札から一枚抜き取った。

――しかし、揃わない。
榛名聖にリードを許してしまった。


何を考えているかわからない近江涼介が、無表情でじっと広瀬真を見つめる。

広瀬真も心を読まれないように、珍しく無表情でそれに向き合っている。


不意に近江涼介の手が広瀬真の手札の右端へと延びる。

広瀬真はその間も無表情を装うが、どれを取られるのか気になってしまって目線が手札へと下がった。

右、左、真ん中、また右…と一枚ずつ近江涼介の指先が広瀬真の手札の上を渡り歩く。

長い心理戦が続き気が緩んだのか左端のところで指が止まる。

その時広瀬真の口角が僅かに上がったのを近江涼介は見逃さなかった。

「っだー!なんでだ!」

違うカードを取られて緊張の糸が切れた広瀬真が豪快に手札を後ろへ投げる。


「バカだから。」

「ポーカーフェイスができないから~。」

ペアが揃って淡々とカードを捨てる近江涼介を挟んで、私と榛名聖は馬鹿にしたような笑いを浮かべた。

そんなこんなで賑やかしく周回していくと、さすがの広瀬真もポーカーフェイスを習得したらしい。
ババが回るようになり、遅れを取り戻す神の引きで追い上げ始めた。

さて、続いて近江涼介VS広瀬真だ。
こちらは広瀬真がババを持っているから見物だ。

――この心理戦、どうなる?