姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


ようやく階段を登り終えて、いつもの教室まであと数十メートル。

近江涼介は盾にできなくなったので、私と広瀬真は1列になって前後をこまめに入れ替わりながら歩いている。


……つまり先頭を押し付け合っているわけで。

なんなら一歩進もうとするごとに入れ替わるから全く前進していかない。


近江涼介は私と広瀬真に捕まらないように、数メートル離れて前を歩いている。

背中からは絶対に触るなオーラが溢れ出していた。


「ちょっとアンタさっさと歩きなさいよ!男でしょ!」

「お前は女は女でも普段から何人も蹴散らしてるゴリラだろ!お前が行け!」

「幽霊は物理攻撃効かないから無理!」

「呪いに男も女もねーよ舐めてんのかブス!」

前方の般若を刺激するわけにはいかないから、ヒソヒソ声で火花を散らす。

3歩進んで2.5歩下がる調子でようやく一教室分進んだ時だった。


――いつもの部屋の隣の教室あたりに差し掛かった近江涼介が、急に何かに引っ張られて私たちの視界から消えた。

次いで勢いよく引き戸が閉まる音がして、私と広瀬真は青ざめながら顔を見合わせる。


「「存在しない教室…!!!」」


榛名聖の言っていたことがどんどん起こって、私も広瀬真も大パニックでその場に留まり続けた。


「どどどどうすんのよ!近江涼介攫われちゃった!」

「とりあえず除霊!!イタコか!?陰陽師か!?」

「その前に近江涼介が呪い殺されたらどうすんのよ!?
とととりあえず私たちも行かなくちゃ!」


もう一度2人で闇を見つめて覚悟を決めたように唾を飲み込む。

2人でガッチリ腕を組んで、ジリジリと存在しない教室へと近づいていく。

そして問題の教室の入り口に差し掛かった時……


バン!と戸板が割れるような音と共に勢いよくドアが開き、白くゆらめく物体が教室から飛び出してきた。


「「ギャーーーーーー!!」」


今年1番の絶叫が旧校舎内に響き渡った。