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昼休み。
開放感抜群の新校舎とは同じ敷地内と思えぬ、昼でも薄暗く鬱蒼とした雑木林の中を私は1人で歩いている。
足取り軽く出発したのに、その不気味さに今は一歩一歩が重い。
必要以上に長い時間をかけて、やっと旧校舎に辿り着き、外壁伝いに歩いて入り口を目指した。
古ぼけで汚れた校舎がおどろおどろしい。
それにここには、幽霊が出るって噂もあって――……
「ちょっと。」
(出た――――――――ッ!!)
叫びそうになったのを、すんでのところで持ち堪えた。
心臓がバクバク言って、今にも口から飛び出しそうになりながら恐る恐る声の方に振り返る。
そこにいたのは女の形相をした鬼……
ではなくて、鬼の形相をした女子御一行様だった。
スン。
なんだ女か。しょーもない。
急速に冷静になってため息をつき、片側に自重を乗せたかったるい態度をとる。
それに煽られて先頭にいた女の顔がカッ赤くなった。
「なんなのアンタ!H2Oにまで手ェ出して!
調子に乗ってんじゃねーよ!」
不意打ちで校舎の壁に押し付けられて、肩を強くぶつけてしまった。
けれど、痺れる様な怒声を冷めた目で受け流す。
悪いけど、こちとらヒステリーには慣れっこなのよ。
鬱々とした雑木林を背景に吠える奴らをぼんやりと眺める。
リーダー格の女の後ろの安全圏で、「そうよそうよ」と言うだけの奴らにも反吐が出る。
もう解散でいいですか、ありがとうございましたー。
……と欠伸をひとつ。それが奴の気に障ったらしい。


