姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


秋も深まる今日この頃。
私はといえば今日も旧校舎でH2Oの面々と、優雅にお茶を啜ってる。


今日の紅茶は……なんだっけ?
ナントカっていう小洒落た名前のやつ。
なんか香りも小洒落た感じの、アレ。


一つのテーブルを囲んで座っているっていうのに広瀬真はガリガリ勉強しているし、近江涼介は小難しそうな本を読んでいるし、榛名聖はスマホ弄ってるし。

つまり何が言いたいかって言うと、そう。



「暇。」

溶けるように机に両手を伸ばして倒れ込む。

広瀬真が睨めっこしていたノートを押してしまって、盛大に字がブレたようだけどそんなのはまぁいい。

「おいふざけんな!」とかキャンキャン怒る声も気にせず、私はテーブルを占領し続けた。



――なぜこんなに暇かと言えば、理由がちゃんとある。
新学期初めの事件のとき、近江涼介が「藤澤姫に手を出すな」って女共に凄んだせいだ。

その一件は瞬く間に広まって、H2Oに嫌われたくない女共はピタッと私への嫌がらせをしなくなった。


おかげで下駄箱にはガチモンのラブレターしか来なくなったし、所持品を狙われることも敵意に満ちた目を向けられることもなくなったというわけで。

誰も攻撃してこなくなったからには、こちらも復讐も何もしようがないわけで。


「つまりこれはそう、私の人生のやりがいを奪われたと言っても過言ではないと言うこと……!」

「急に何言ってんだオマエ。」

唐突に起き上がって胸の前で拳を作った私に、広瀬真は心底ドン引きしたような視線を送る。

そんなヤツを見てまた意気消沈、テーブルに溶けた。


(一応心配してくれる友達がいるわけだし、無茶苦茶できなくなったんだった。)