姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「そんな決まり知らないしー?アンタらが勝手に牽制し合ってただけでしょ。
ズルくもなんともない。

私はアイツらの友達だから、誰がなんと言おうと離れたりしないから!」


言った後に「友達」って言葉はコイツらを攻撃するのには不適切なワードだったか、と打算が頭をよぎる。

だけどすぐどうでもよくなった。

だってこれは、紛れもない私の本心だ。


「なっ…ふざけないで!」

図星を突かれてついにカッとなったのか、女1の手がこっちに伸びてくる。

そんなことまで今までの経験上予測済みだった私は、華麗に大きく弧を描くようにして女と壁の間から抜け出した――……


「あっ。」


狭い踊り場で華麗に舞いすぎた。
つまり、動きが大きすぎて階段を踏み外した。


ひゅんっと下腹部が締まる感覚がして、世界がスローモーションになって落ちていっていることを自覚した。


――やばい、この国宝級の美しい顔だけは守らなくちゃ。


両腕で顔を覆ってキツく目を瞑り、床に叩きつけられるその瞬間を覚悟した時。


「姫!」


落ちた衝撃は思ったよりソフトだった。
背面に感じる感触も、思ったより柔らかくて温かい。

そう、人間みたいな感触……。


「今日の日直は俺だ、ブス。」


ガードした腕の隙間から見上げると、表情を歪めた広瀬真の顔が見える。

どうやら私は広瀬真の胸に背中を預ける形で着地したらしい。

広瀬真の足の間で、なぜいまこんな体勢になっているのか理解が追いつかず、私は石像のように固まっている。

そんな中、向こうからバタバタと走ってくる音がして、ちょっとしてからその音は私たちのすぐ側で止まった。