姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


――――
――……

数学科室は3階。棟が教室とは違うから、今の時間は人通りも少ない。


後回しにすると余計気まずいってわかってる……!

わかってるんだけど〜〜……


ウンウン唸りながら2階まで上がり、さらに上を目指して踊り場まできたところでまた呼び止められた。


「ちょっと。」
「ひゃいっ!?」

人の気配に気づかなくて、変な声が出た。

バクバクしている心臓を抑えながら振り向くと、さっきの2人組が怖い顔して階段を登ってきていた。

「……まだ何か?」

怒りのオーラ丸出しの表情で大体の用件は察しがつく。


H2Oの前ではしらっとした顔してたのに、演技がお上手ですこと。

「近江くん達から離れろって忠告したのに、いつまでちょっかい出すつもり?」


女1が階段を上り切って私に迫る。女2もそうよそうよとばかりに頷く。


私はといえば2人の圧をものともしてないことを示すように、冷静に真顔で踊り場の壁に凭れかかって余裕を見せた。


「なるほど。あの黒板の落書きはアンタらの仕業ってワケ。
あんなセコイやり方で私が怯むワケないでしょ、残念でしたぁ♡」


きゃぴ、と片方の手のひらを自分の頬に当ててかわいい笑顔を作る。
奴らは挑発に簡単に乗っかって、口元を痙攣させている。


「っ………!
アンタばっかりズルいのよ!H2Oはみんなで愛でるだけって暗黙の了解があったのに……!」

女2憎らしげに表情を歪めた。


(くだらない。)

そう思ったのがハッと嘲る吐息に変わる。