次の日から、H2Oへの猛攻撃が始まった。
「おはよう。近江くん、榛名くん♡ついでにえーっと、広瀬くん♡」
大勢の女共が花道を作る様に並ぶ廊下のど真ん中で、今日も私は天使の笑顔で輝いている。
窓から差し込む春の朝日が、その効果を倍加させる様に神々しく私を照らしていた。
「おはよ〜、藤澤ちゃん。」
私の声に反応して振り返った榛名聖が、気の抜ける笑顔でひらんゆらんと手を振ってきた。
同じくこっちを見た金髪は、苦虫噛み潰したみたいな顔で口端を引き攣らせている。
「テメーまた来たのか、ブス!昨日で懲りろ!」
カッチーン。
……私、決めてるんだぁ。
コイツを落とした暁には、思いつく限りの罵詈雑言を浴びせてやるって。
静かな炎が上が燃え上がる中、近江涼介だけは今日も後ろ姿だ。
まぁ反応は得たしとバカ金髪はスルーすることにして、私は可愛く弾む様な足取りで近江涼介の隣に並んだ。
「近江くんおはよう♡」
無視。
「あれ?聞こえてないのかなぁ?」
無視。
「ねぇ、近江くんってばぁっ。」
無視、無視、無視。
なんなのコイツ、しまいにゃ虫になるんじゃないの!?
近江涼介は一定のリズムで歩いているクセに、追うたび一歩だけ先に行く。
無視の仕方がプロのそれ。
またしても女共の嫉妬の炎が嘲笑に変わる。
こんな屈辱を2度も味わうことになるなんて!
「……って、アレ?」
クッと下を向いて悔しさを噛み締めている間に、気づけば奴らは消えていた。
いつのまに?あいつら忍者かなんかなの?
……まぁいいけど。
昨日偶然奴らの隠れ家を見つけたし。
絶対に逃がさなくってよ!


