意味がわからなすぎて眉間に皺を寄せて困惑を全面に表出する私に対して、近江涼介は無表情で前を見たまま話し続ける。
「“友達“の俺がボッコボコに殴られてボロボロになってる。
――なのに、まぁ気にすんなって言ってたらどうする?」
友達が………ボッコボコ……
強烈なワードに一気に頭が沸騰して、力強く拳を突き上げた。
「ふざけんなぁ!復讐よ!やった奴ボコボコのギタギタにしてくれるわ!
っていうか近江涼介!アンタも少しは気にしなさいよ!!」
拳をそのまま近江涼介の目の前に振り翳してぶん回す。
ずっと前を見ていた近江涼介が、不意にこっちをまっすぐ見てきた。
「真も同じ気持ちだったんじゃねーの?」
予想外に飛び出した名前に、思わず動きが止まってしまった。
近江涼介の私を射抜くような視線は、目を逸らすことを許さない。
「“友達“が不当に傷つけられたら、その傷を自覚してなかったら、怒りたくもなるだろ。」
悔しいような気まずいような、なんとも表現し難いきまり悪さに固く結んだ口がモゾモゾと動く。
広瀬真の言動と、近江涼介の言葉が頭の中で再生されて、答え合わせするみたいに結びついていくのがわかる。
わかる、けど。それを自覚すればするほど気まずくなっていく。
「ここまでわかったら、やることはひとつだと思うけど?」
「………。」
「じゃ、また明日。」と
顰めっ面の私の髪を乱すようにグシャリと頭をひと撫ですると、近江涼介は歩いていってしまった。
――考えるまでもなく、何をすべきかわかってしまった。
…………けど。
「どうすりゃいいのよ……。」
無理難題に途方に暮れ、乱された髪をさらに崩すように頭を抱えた。



