「………。世界一可愛い私のぶりっこのことを指してるんだとしたら、今はやらないわよ。
あいつらが勝手に勘違いしてたみたいだけど、さっきの行動は復讐が目的じゃなくて友達を捕まえるためにしたことだし。」
非生命体みたいな顔立ちと人間らしい体温のアンバランスさが気持ち悪くなってきて、掴んだ腕を解放して一歩下がる。
間近で目と目があった時、一瞬思考停止してしまったのは秘密だ。
「……姫のその変に筋が通ってるとこ、面白い。」
近江涼介が持っていた本で軽く頭を叩かれる。
褒められてるようで貶してる物言いムカつく。
抗議の一睨みを利かせた時に見た近江涼介の顔は、コンマ0.何秒かだけ笑って見えた。
「ところで。近江涼介はなぜここに?アンタも家、近いの?」
「こっから電車で1時間。」
「え、めちゃくちゃ遠いじゃない。
そんな遠くからなぜわざわざこんな学校の近くに………。だるくない?」
休みの日に用もなく、学校以外特に何もないこんなところに出向く意味の理解に苦しんで腕を組む。
無感情にこちらを見ていた近江涼介の視線が、ふっと外れて伏目がちに窓の外を見た。
「あんまりいたくないから?家とか地元に。」
静かに佇む近江涼介を窓から差し込む夕暮れが近づいた日の光が照らして、もの憂げな様子にも儚いような様子にも演出している。
地元はともかくとして、家にいたくないなんてやはりコイツの生態は謎だらけだ。
嘘をついているようにも見えず、たまに見せる人間らしい感情の揺れを感じて、この憂鬱な空気をぶち壊したくなる。
「アンタも友達いなかったのね、可哀想に。」
「あ?」
「だからH2Oなんてダサいトリオ作ってたむろってたのねー⭐︎」
わざとらしく両手を低くあげて“やれやれ”と言う動きで煽る。
空気を変えようとしたのを察したのか、近江涼介の表情がいくらか緩んだように見えた。



