姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


――――
――……

「おかえり、今日テストの結果でたでしょう?
ちゃんと見せてね。」


玄関ドアが開く音を聞いて、1人の女性が帰ってきた少年を出迎える。
キッチンでの作業を中断してきたのだろう、エプロンで濡れた手を拭いている。

まっすぐで艶やかな黒髪は、あの無表情の男を彷彿とさせるが、その表情は優しく穏やかだ。


「……ん。」

少年は靴を脱ぐ前に鞄から細長い用紙を取り出して渡す。
そこに書かれたものを見ると、女性はみるみるうちに笑顔になった。


「49位って…すごいじゃない!
“あの”涼ちゃんが有名進学校に行けただけでもすごいのに。
お母さんびっくりしちゃった。」


息子の出来の良さにはしゃぐ姿は子どものよう。

“涼ちゃん”と呼ばれた息子は、その姿を見て少し目を伏せた。


「……そう?じゃ、俺着替えてくるから。」

ようやく靴を脱いで家に上がると、すぐに玄関側の階段を上がって自室に消えてしまう。

女性は慌ててその後ろ姿を追って、階段下から仁王立ちして閉まる部屋のドアに向かって怖い顔をする。

「コラ!ちゃんと手を洗ってからっていつも言っているでしょう?」

――まるで小さな子どもに言うかのよう。

顰めた表情も「仕方のない子ね」とすぐに緩むその姿は、息子を心から可愛いと思っていることを示していた。