「困ったね。僕らはスマホを楽屋に置いてきてしまったし」

「あっ!」


 理央くんが声をあげた。


「どうした、理央?」

「ここ、タッチパネルがついてるよ」


 言われてみんなで確認すると、ドアの横に数字式のタッチパネルがついていた。


「もしかしてパスコードで開けるんじゃないか?」

「でも桁数わからないし、どうやってパスコードを割り出すの?」

「しえる、いやスピカ」


 蒼真くんが私の方を振り返る。


「出番だぞ」

「えっ……」

「ハッキングで開けてくれ」


 幸いにしてタッチパネルにはUSBを差し込めそうな口がある。
 私は瞬時に切り替えた。


「やってみる!」

「任せたぞ」


 蒼真くんはニコッと穏やかに笑う。

 私はスマホとUSBケーブルをつなぎ、ハッキングアプリを立ち上げた。
 実はこのアプリ、理央くんがグレードアップしてくれてかなり性能が上がってる。

 絶対に収録までに間に合わせるんだ……!

 私は目にも止まらぬ速さでコードを入力していく。
 複雑なセキュリティがかけられているわけじゃない、このくらいならスピカには造作もないことだ。

 迷路をくぐり抜けていくようなイメージで、さまざまな障害物を突破して“答え”にたどり着く。

 ガチャリ。
 一分経ったところで鍵が開く音がした。