「それじゃ美織、行ってくるね」

「うん、いってらっしゃい」

「くれぐれも気をつけてね?」

「もう、しえるは心配性だなぁ」


 これから私はStergazeの音楽番組の収録に同行する。
 一応表向きはマネージャーだから一緒に来いって言われちゃって。

 だから美織はお留守番。
 天ノ川が雇ったボディガードが美織についていてくれるみたいだけど、それでも心配だ。


「わたしの代わりに廉くんのこと見てきて」

「美織って廉くんのこと好きなの?」

「ち、違う! ファンなだけだよ!」


 美織は慌てて否定してたけど、なーんか怪しいんだよね〜。
 まあ二人ともアイドルだし恋愛はできないと思うし、あまり突っ込むのはやめておこう。

 そう、彼らはアイドルなんだ。
 ファンのみんなを笑顔にすることが仕事だし、スパイとしての任務もある。

 恋したって叶うわけがないんだよね――……。

 ……って、私ったら何考えてるんだろ。


「しえる、何してるんだ?」

「うわあっ!」

「早く行くぞ」

「う、うん」


 だから、蒼真くんにときめいてしまう気持ちは恋じゃない。
 アイドルとしてときめいてしまうんだって、自分自身に思い込ませようとした。