本当に大丈夫かなぁ? と不安だったけど、隼人くんが一から丁寧に教えてくれる。
「足は肩幅くらいに開いて、こう少し体を引いて、エイヤー! って感じで拳を突き出すんだ」
「こ、こう?」
「そうそう、その調子!」
私のパンチなんて弱々しいものだけど、それでも隼人くんが褒めてくれるからなんだかやる気が湧いてくる。
「エイヤーッ!」
「いいぞ、しえる! 上手くなってきたな」
「隼人くんの教え方が上手いからだよ」
「しえるの筋がいいんだよ。これなら何かあった時、とっさに美織ちゃんのこと守れるかもな」
――ああ、そうか。
だから隼人くんは一緒に稽古しようって言ってくれたんだ。
私にもできることがあるよって、励まそうとしてくれたのかもしれない。
「優しいね、隼人くん」
「え?」
「私のこと励まそうとしてくれたんだよね? ありがとう」
隼人くんは普段バラエティ番組に出ることが多い。
バラエティはただ盛り上げて楽しむだけではダメで、全体の空気を読むこともすごく大事なんだって蒼真くんが言ってた。
それが隼人くんはすごく上手いんだって。
ただ楽しく騒いでるように見えても、実際はすごく周りのことをよく見ている。



