美織を見送った後、私は自室に戻ろうとしてお兄ちゃんに声をかけられた。


「お、しえる。美織ちゃん帰った?」

「うん」

「んじゃ、“仕事”だな」


 お兄ちゃんはニヤッと笑う。


「はいはい。今日はなんだっけ?」

「ある企業でコンピュータウイルスに感染した。そのウイルスの感染元を探ってほしい」

「ふーん」


 私は自分のPCを立ち上げ、星マークのついたUSBメモリを差し込む。


「詳細はメールに送ったから」

「了解」


 カタカタとキーボードを叩き、メールを開く。
 でもメールは真っ白で何も書かれてない。

 これはね、暗号メールなんだ。
 一見空メールに見えるけど、こうやってパスワードを入力すると――、ほら文字が浮かび上がった。

 メールにはURLが書かれていたのでクリックする。


「これは本来企業の内部の人間の一部にしか教えられない、機密情報だから気をつけろよ」

「わかってるってば」


 私は気合いを入れるために髪をポニーテールに結いて、メガネをかける。


「スピカ、ミッションスタート!」


 実は私にはもう一つ秘密がある。
 それは、コードネーム【スピカ】というホワイトハッカーだということ!