実は私のスマホにはスピカ専用のハッキングアプリが入ってる。

 PCがない時でもスマホから使えるようにと、お兄ちゃんが開発した特別なアプリなんだよね。
 USBケーブルでスマホとエレベーターをつないだら、アプリを使ってハッキングができちゃうの。

 だけどそれを蒼真くんに見られるわけにはいかないんだよなぁ……。

 でも、このまま閉じ込められたままは困る!


「あ、あのー、蒼真くん」

「ん?」


 蒼真くんは顔を上げる。


「だ、誰かと連絡つきそう?」

「いやダメだ。廉は生徒会の仕事があるって言ってたしな」


 廉くんって生徒会にも入ってるんだ。
 すごいな。


「隼人は絶対見ねえし。理央のやつも寝てる気がする」

「Stergazeの人たちって自由なんだね」

「ほんとだよ」


 蒼真くんはムスッとしている。
 なんだか意外だな。ずっとクールな人かと思ってた。


「あのね蒼真くん、実は私のスマホ充電切れちゃったみたいで」

「え? こんな時に?」

「そうなの。でもモバイルバッテリー持ってるから大丈夫」


 そう言って私はスマホにUSBケーブルを差し込む。


「モバイルバッテリー持ち歩いててよかったよ〜」


 なんて言いながら、さりげなーくUSBケーブルをエレベーターに差し込んだ。

 よし! あとは見られないように気をつけながら、ハッキング開始だ。