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天ノ川学園にはエレベーターがある。
重い荷物を運んだり、階段が使えない子のために。
だから普段は使っちゃダメってことになってるんだよね。
私は先生に頼まれて(押し付けられて)三階から一階まで資料を運ぶことになっていた。
これ、重すぎじゃない?
女子一人じゃキツいと思うんだけど!
だから、こっそりエレベーター使ってもいいよね?
というわけで私はエレベーターに乗ろうとした。
今なら誰もいないし、大丈夫でしょ!
「ふふっ、これくらい見逃してくれるよね」
エレベーターが三階に停まり、扉が開いた。
「え? ――ええっ!?」
私は思わず大声をあげてしまう。
だって、誰もいないと思っていたエレベーターに人が乗っていたから。
しかもこの人、犬飼蒼真くん!?
「ご、ごめんなさいっ」
びっくりしすぎて思わず謝ってしまった。
別に何も悪いことしてないのに。
「――乗らないの?」
「え?」
「乗るために待ってたんだろ?」
「あ……うん」
私はおずおずとエレベーターに乗り込む。
「何階?」
「一階です」



