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「蒼真くんみーつけた」

「しえる」


 図書室をのぞいてみたら、一番奥の人目につかないところで蒼真くんが読書していた。


「ごめんね。邪魔しちゃったかな?」

「いや、大丈夫だ。何かあったか?」

「えっとね、改めて蒼真くんにお礼言いたいなと思って」


 私は蒼真くんの隣に腰かける。
 蒼真くんは読んでいた本を閉じてたずねた。


「お礼?」

「あの時、怪我してまで私のこと守ってくれてありがとう」


 蒼真くんの腕には目立たないようにだけど、包帯が巻かれている。
 でも怪我はほとんど治っていて、あと少ししたら包帯も外せるそうだ。


「蒼真くんのおかげだよ」

「しえるががんばってくれたからだろう。俺の方こそありがとう」


 やっぱり蒼真くんの隣にいると、すごくドキドキするのに心地よくて安心する。


「それからね、マネージャーとして誰かをひいきしたくないから、みんなのこと応援してる。誰が推し? って聞かれたら、みんなって答えるか美織って答えると思う」

「……そうか」


 蒼真くんは明らかに不満そうにムムっとしていた。


「でも、本当は……蒼真くんが一番だよ」


 私の気持ちは、蒼真くんに伝えるべきじゃないんだと思う。
 蒼真くんはアイドルだから、恋人にはなれない。

 それでもね、言いたかったの。
 私が一番好きなのは蒼真くんだよ、って。