トイレの中には紙袋も置かれていて、中には黒髪ロングのウィッグが入っていた。
 これをかぶって気づかれないように出ていけってことだと思った。

 トイレの前で隼人くんが待っていてくれたけど、私は黙って従うしかなかった。
 たとえワナだとわかっていても、しえるに何かされるのは耐えきれなかったの。

 ごめんなさい、と心の中で謝りながら静かにトイレを出た。
 学園の裏口から出て行き、メテオプロダクションの本社ビルに向かった。

 前におじいさまと一緒に行ったことがあったから、場所は知っていた。
 ビルの前についた途端、何かを嗅がされて私は意識を失った。

 気がついたら、ここに監禁されていたの。


「ん〜っ、ん〜っ」


 何度ジタバタしても縄はほどけないし、口に当てられた布も外せない。

 ここで助けを待つしかないのかな?
 しえるは来てくれるのかな?

 ううん、しえるなら絶対来てくれる。
 私がここにいること、きっと気づいてくれる。

 だってしえるは天才ハッカーなんだもん。


「っ!」


 ギギギッという音がして、扉が開いた。
 扉から差し込む光がまぶしくて思わず目をつむってしまう。


「――美織ちゃん?」