私の名前は星咲(ほしさき)しえる。
 どこにでもいる普通の中学二年生。


「しえる! おはよう!」

「おはよう!」


 学校の成績は可もなく不可もなく。
 運動神経は悪くないけど、特別足が速いわけでもない。

 もちろん容姿も普通。
 自分で言うのも難だけど、平凡という言葉が似合いすぎるくらいに平凡。

 それが私、星咲しえるです。


「ねぇしえる〜、お願いがあるんだけど」


 そう言って私に話しかけてきたのは、同じクラスの優香(ゆうか)


「芸能科についてきてくれない!?」

「えっ、芸能科?」

「うん、お姉ちゃんの忘れ物届けに行きたいの」


 あーー、優香のお姉ちゃんって“芸能科”だっけ。


「お願い! 一人で芸能科の校舎行きづらいんだもん。しえる、あんまり芸能科に興味ないでしょ?」

「まー、そうだけど」

「ミーハーだって思われても困るから! ね、お願い!」


 うーーん、仕方ない。
 あんまり芸能科には近づきたくないけど、友達の頼みだもんね。


「わかった、いいよ」

「ありがとう! しえる」