だから両親――主に父クリストフの強い勧めもあり、アルベルティーナの意思は考慮されないまま、今夜のように積極的に舞踏会に参加したり園遊会を催したりして、外交という名目のお婿探しをさせられているのだった。
幸い、アルベルティーナは容姿に恵まれていた。漆黒の艶やかな髪に、黒サファイアのように輝く大きな瞳。肌は絹のように滑らかに白く、唇と頬にはピンクのバラ色がほんのりついている。そんな彼女を見た誰もが、美しい、と思わず呟くほどだ。
それ故、彼女に求婚する男性は少なくは無かった。今日のように王家主催の舞踏会などには、アルベルティーナに会う為にはるか遠くの国から王子が来ていたりもするのだった。
「――……ーナ様……アルベルティーナ様!」
急に耳元で声が聞こえ、アルベルティーナは驚いてしまった。どうやら随分ぼんやりとしてしまっていたみたいだ。声の方へ顔を向けると、ちょび髭の男が困り顔でこちらを見ていた。
「聞いておられましたか? 女王陛下」
(……全く聞いていなかった)
誤魔化すように微笑むと、ちょび髭は呆れたようにため息を吐いた。
ちょび髭の彼は、アルベルティーナの補佐役のニコライ。父親の代から、舞踏会などの行事ごとを取り仕切ってくれる、こう見えても頼れる男だ。最近は年のせいでだいぶ出てしまった太鼓腹を気にしている。
「申し上げたのは、謁見も今宵はもう無いようですから、女王陛下もどなたかとダンスを楽しまれてはいかがでしょうか、という事です」
几帳面な性格のニコライは、丁寧にもう一度同じ様に言葉を繰り返し教えてくれた。彼の言葉通り、謁見の行列はとうに無くなっていた。だからこそアルベルティーナはぼんやり出来たのだが。
幸い、アルベルティーナは容姿に恵まれていた。漆黒の艶やかな髪に、黒サファイアのように輝く大きな瞳。肌は絹のように滑らかに白く、唇と頬にはピンクのバラ色がほんのりついている。そんな彼女を見た誰もが、美しい、と思わず呟くほどだ。
それ故、彼女に求婚する男性は少なくは無かった。今日のように王家主催の舞踏会などには、アルベルティーナに会う為にはるか遠くの国から王子が来ていたりもするのだった。
「――……ーナ様……アルベルティーナ様!」
急に耳元で声が聞こえ、アルベルティーナは驚いてしまった。どうやら随分ぼんやりとしてしまっていたみたいだ。声の方へ顔を向けると、ちょび髭の男が困り顔でこちらを見ていた。
「聞いておられましたか? 女王陛下」
(……全く聞いていなかった)
誤魔化すように微笑むと、ちょび髭は呆れたようにため息を吐いた。
ちょび髭の彼は、アルベルティーナの補佐役のニコライ。父親の代から、舞踏会などの行事ごとを取り仕切ってくれる、こう見えても頼れる男だ。最近は年のせいでだいぶ出てしまった太鼓腹を気にしている。
「申し上げたのは、謁見も今宵はもう無いようですから、女王陛下もどなたかとダンスを楽しまれてはいかがでしょうか、という事です」
几帳面な性格のニコライは、丁寧にもう一度同じ様に言葉を繰り返し教えてくれた。彼の言葉通り、謁見の行列はとうに無くなっていた。だからこそアルベルティーナはぼんやり出来たのだが。


