そんな光景を眺めながらアルベルティーナは、顔では微笑みを絶やさずに、心では全く別の事を考えていた。
(……ああ、早く終わらないかしら)
今夜の衣装は最悪だった。ドレス下に着ているコルセットはウエストを締め過ぎていて苦しいし、スカートのパニエはガサガサしていて重くて歩き辛い。胸元のネックレスは会場のシャンデリアの光にやたら反射して眩しくて嫌だ。
挙句に、結い上げた髪も上に引っ張られ過ぎてこめかみが痛い。とにかく、何もかもにうんざりしていた。それに――
「――女王陛下、そろそろ謁見を始めてもよろしいでしょうか?」
「ああ、ええ……まあ……」
さきほど口上を述べたちょび髭が、アルベルティーナにそっと耳打ちをした。それにまたうんざりしながら、しかし顔には笑顔を貼り付けて承諾の言葉を返す。するとちょび髭の指示で、彼女の目の前に二人一組ずつの列が出来ていった。
「お目にかかれて光栄です、アルベルティーナ女王陛下。私は――」
独身の女王陛下に自分を売り込みたい者や、王家に取り入りたい貴族たち。腹に一物抱えた者たちが一組ずつ、社交辞令の挨拶を彼女にしてゆく。アルベルティーナはそれに一つずつ丁寧に笑顔と礼を返さなくてはならないのだ。
時にはその列が、何十組と続いたりもする。
それも国の女王陛下の仕事だと言われればその通りなのだが……。他のお客たちが楽しそうに笑っていたり、異性とダンスを楽しむのと比べたら、面倒でつまらない事この上無い。
(私も二年前は、舞踏会を楽しんでいたのだけれど……)
アルベルティーナは人が途切れた少しの間に、誰にも気付かれないように小さくため息を吐いた。
(……ああ、早く終わらないかしら)
今夜の衣装は最悪だった。ドレス下に着ているコルセットはウエストを締め過ぎていて苦しいし、スカートのパニエはガサガサしていて重くて歩き辛い。胸元のネックレスは会場のシャンデリアの光にやたら反射して眩しくて嫌だ。
挙句に、結い上げた髪も上に引っ張られ過ぎてこめかみが痛い。とにかく、何もかもにうんざりしていた。それに――
「――女王陛下、そろそろ謁見を始めてもよろしいでしょうか?」
「ああ、ええ……まあ……」
さきほど口上を述べたちょび髭が、アルベルティーナにそっと耳打ちをした。それにまたうんざりしながら、しかし顔には笑顔を貼り付けて承諾の言葉を返す。するとちょび髭の指示で、彼女の目の前に二人一組ずつの列が出来ていった。
「お目にかかれて光栄です、アルベルティーナ女王陛下。私は――」
独身の女王陛下に自分を売り込みたい者や、王家に取り入りたい貴族たち。腹に一物抱えた者たちが一組ずつ、社交辞令の挨拶を彼女にしてゆく。アルベルティーナはそれに一つずつ丁寧に笑顔と礼を返さなくてはならないのだ。
時にはその列が、何十組と続いたりもする。
それも国の女王陛下の仕事だと言われればその通りなのだが……。他のお客たちが楽しそうに笑っていたり、異性とダンスを楽しむのと比べたら、面倒でつまらない事この上無い。
(私も二年前は、舞踏会を楽しんでいたのだけれど……)
アルベルティーナは人が途切れた少しの間に、誰にも気付かれないように小さくため息を吐いた。


