女王陛下のお婿さま



 アルベルティーナの私室は、長い階段を登った棟の一番上だ。二人で黙々と階段を上がり、辿り着いた部屋の扉を開けた。

 すると、金色の光が部屋を包んでいた。

 今日は朝からいい天気だった。その夕陽が、部屋を照らしていたのだ。棟は東側だから太陽は見えないが、空に広がる夕焼けの光は、部屋にも届いていた。

 夕陽が部屋の家具をキラキラと輝かせているのを眺めながら、二人はゆっくりと窓辺へ近づく。

「……夕陽で真っ赤だな。まるで、子供の頃見た朝焼けみたいだ」

 窓の外の空を眺めるクラウスの隣に、アルベルティーナも立つ。そして彼の手をキュッと握った。

「本当に、あの時と同じだね、クラウス」

 クラウスも、アルベルティーナの手を握り返す。

 ――朝焼けの約束。

 アルベルティーナとクラウスは、あの時を懐かしむように夕焼け空を眺めながら目を細めた。

「ティナ……これから先もずっと、俺はティナを守るよ」

「うん、私も……ずっとクラウスを守るわ」

 あの時と同じ約束。でも今度は夕焼けの約束だった。これから先、二人で何度も朝焼けと夕焼けを見て、何度も交わした約束を思い出すだろう。

 今、二人で一緒にいられる幸せを、噛み締めながら。

 どちらからともなく、アルベルティーナとクラウスは見つめ合い、吸い寄せられるように唇を重ねた。

 その口づけは甘く優しく、永遠の約束のようで……

 夕陽は徐々に落ちてゆき、辺りも段々と夜へ変わってゆく。薄暗闇になった部屋で名残惜しそうに唇を離すと、アルベルティーナは少しはにかんで微笑んだ。

 クラウスも同じだったのだろう、彼女をそっと抱き寄せる。照れて赤くなった顔が見えないように。

 今、ここにいるのは女王ではない。

 ただの一人の女性として、アルベルティーナはクラウスの温かい腕の中で幸せな気持ちで身を預け、そっと瞳を閉じた。瞳から零れた幸せな涙が一粒、アルベルティーナの頬に落ちていった。










【おわり】