久々津はカップの中のコーヒーを全て飲み干し、それをセンターテーブルに静かに置いて言う。
「多分、この世界のどっかにはいると思うよ……生きてると思う、日葵の母親」
生きてる……? 本当に?
誰かもわからないのに?
宝瑠は久々津を見つめた。なぜ、そんなふうに言い切れるのか。疑問が胸に残った。
もしかすると、ある程度のあたりは付けているのかもしれない、そう思ってしまう。彼の中に心当たりが存在しているのかもしれない。それなのに、“探さない”のだ。
その理由は……?
不安げに眉を寄せた宝瑠を、久々津が表情を変えずにジッと見つめた。
「でも。施設の前に捨てるような女だ。生後間もない赤ん坊を段ボールに入れて置き去りにするような母親。そんな親を知って、日葵がショックを受けるぐらいなら。あんたそっくりの“写真”を母親だと信じてるほうがずっと幸せ……そうは思わない?」
だから探さないのだ。そう言われた気がして、胸の奥がひび割れた。
日葵が事実を知って傷つくぐらいなら、まやかしの母親像を与えておいた方がいい……それが久々津の、父親としての判断なのだ。
「じゃあ久々津さんは……今のまま、私に曖昧な立場でいろというの?」
「多分、この世界のどっかにはいると思うよ……生きてると思う、日葵の母親」
生きてる……? 本当に?
誰かもわからないのに?
宝瑠は久々津を見つめた。なぜ、そんなふうに言い切れるのか。疑問が胸に残った。
もしかすると、ある程度のあたりは付けているのかもしれない、そう思ってしまう。彼の中に心当たりが存在しているのかもしれない。それなのに、“探さない”のだ。
その理由は……?
不安げに眉を寄せた宝瑠を、久々津が表情を変えずにジッと見つめた。
「でも。施設の前に捨てるような女だ。生後間もない赤ん坊を段ボールに入れて置き去りにするような母親。そんな親を知って、日葵がショックを受けるぐらいなら。あんたそっくりの“写真”を母親だと信じてるほうがずっと幸せ……そうは思わない?」
だから探さないのだ。そう言われた気がして、胸の奥がひび割れた。
日葵が事実を知って傷つくぐらいなら、まやかしの母親像を与えておいた方がいい……それが久々津の、父親としての判断なのだ。
「じゃあ久々津さんは……今のまま、私に曖昧な立場でいろというの?」



