ホッとひと息ついた安心感を、ぶち壊すように彼が言う。
「そのコーヒーに睡眠薬が入ってるかもしれませんよ?」
「……っえぇ?!」
大袈裟に動揺すると、久々津がギョッとし、「シッ!」と唇の前で人差し指を当てた。目だけで日葵の部屋を見つめ、耳を澄ませていた。
「すみません」と宝瑠は小声で応対した。「いえ」と彼が首を振り、「まぁ、冗談ですけどね」と続けた。
宝瑠は両手でカップを包みながら、昼に交わした会話を思い起こした。
「……言わないんですか、日葵ちゃんに」
「なにを?」
なにをって……。
「本当のママがわからないこと……」
またその話か、と言いたげに、久々津はため息を浮かべた。
「言ってどうなんの?」
さっきまできちんとした敬語だったのに。またタメ口だ。
「ど、どうって……。お父さんでもわからないんだから、それこそ、どうしようもない話だと思いますけど」
「へぇ……それこそ無責任だと思わない?」
「……だって。事実じゃないですか」
久々津はマグカップを傾け、ちらりと宝瑠に目を向けた。
「あんただったらどっちがいい?」
「え……?」
「いるかどうかわからないものとして真実を知らされるか。上手に嘘をつかれるか」
その意味を咀嚼するように考え、宝瑠は真顔になる。ふたりの間に沈黙が落ちた。
「そのコーヒーに睡眠薬が入ってるかもしれませんよ?」
「……っえぇ?!」
大袈裟に動揺すると、久々津がギョッとし、「シッ!」と唇の前で人差し指を当てた。目だけで日葵の部屋を見つめ、耳を澄ませていた。
「すみません」と宝瑠は小声で応対した。「いえ」と彼が首を振り、「まぁ、冗談ですけどね」と続けた。
宝瑠は両手でカップを包みながら、昼に交わした会話を思い起こした。
「……言わないんですか、日葵ちゃんに」
「なにを?」
なにをって……。
「本当のママがわからないこと……」
またその話か、と言いたげに、久々津はため息を浮かべた。
「言ってどうなんの?」
さっきまできちんとした敬語だったのに。またタメ口だ。
「ど、どうって……。お父さんでもわからないんだから、それこそ、どうしようもない話だと思いますけど」
「へぇ……それこそ無責任だと思わない?」
「……だって。事実じゃないですか」
久々津はマグカップを傾け、ちらりと宝瑠に目を向けた。
「あんただったらどっちがいい?」
「え……?」
「いるかどうかわからないものとして真実を知らされるか。上手に嘘をつかれるか」
その意味を咀嚼するように考え、宝瑠は真顔になる。ふたりの間に沈黙が落ちた。



