着いた先は大きな集合住宅、マンションだった。宝瑠は茶色い壁をした外観を見上げた。日葵に自転車置き場へ誘導してもらい、エントランスをくぐった。

 エレベーターの昇降ボタンを押し、白いライトで満たされた箱に乗る。

「ひまのうち、五かいなの」と言い、日葵が行先階ボタンを押した。エレベーターを降りて、通路を奥へと進んだ場所で彼女が立ち止まる。505号室。角部屋だった。表札は出ていない。

 宝瑠は日葵に確認してからインターホンを押した。ピンポーン……と軽快なチャイムが鳴る。一度鳴らしただけでは応答が得られなかったので、日葵が手を伸ばし、ボタンを連打した。宝瑠はぎょっとなる。

「こうしないとパパは開けないから」

 日葵はさも当然のような顔をする。なるほど、インターホンの押し方ひとつで我が子かそうじゃないかを聞き分けているのだ。

『——あれ?』

 ふいにインターホンから声がした。宝瑠は身を正し、「突然、すみません」と声を掛けた。

「レミックスの四ノ宮です。お宅の日葵ちゃんから電話をもらいまして……公園でひとりにさせておくのも心配だったので、勝手ながら迎えに行かせてもらいました」

 少しの間を置いて応答がある。

『……お待ちください』