日葵の無邪気であどけない声を聞き、居た堪れなくなった。
うそ うそ うそ……っ!
背筋が急に寒くなり、考えるより先に玄関へ向かっていた。靴箱の上にある自宅のキーと自転車の鍵を掴んで、家を飛び出した。
「ひまちゃん!」と少しだけ声を張り上げる。
「今からそっちへ向かうから!」
宝瑠の声に対して、日葵からの応答はない。おそらくはスマホを耳から離しているのだ。日葵に宝瑠の声は届かない。
『今ね……ママとお話してるの』
『お母さん? 今日は仕事かなにかで?』
日葵と見知らぬ男性の会話は続いていた。途中で状況がわからなくなると怖いので、電話は切らず通話状態を保ち続けた。
自転車に飛び乗る際、無線通信用のイヤホンを持って出ていないと気づき、ハンズフリーに切り替える。音量を最大にして、できるだけ会話を拾えるようにした。
『そうなんだ……お父さんは家か。良かったらおじさんが家まで送っていこうか?』
信号で引っかかった交差点で、そんな会話を拾い、またひやりとする。
日葵の返答は一貫していて『ううん、いいの』と拒否を示していた。
『ここでママを待ってるから。ママにむかえに来てもらう』
日葵の応答にわずかに安堵しつつも、いらだつ衝動は抑えられなかった。
鼓動がうるさい。赤信号がなかなか青にならないことに、いらだちが膨れ上がっていく。そして、思ってしまう。
うそ うそ うそ……っ!
背筋が急に寒くなり、考えるより先に玄関へ向かっていた。靴箱の上にある自宅のキーと自転車の鍵を掴んで、家を飛び出した。
「ひまちゃん!」と少しだけ声を張り上げる。
「今からそっちへ向かうから!」
宝瑠の声に対して、日葵からの応答はない。おそらくはスマホを耳から離しているのだ。日葵に宝瑠の声は届かない。
『今ね……ママとお話してるの』
『お母さん? 今日は仕事かなにかで?』
日葵と見知らぬ男性の会話は続いていた。途中で状況がわからなくなると怖いので、電話は切らず通話状態を保ち続けた。
自転車に飛び乗る際、無線通信用のイヤホンを持って出ていないと気づき、ハンズフリーに切り替える。音量を最大にして、できるだけ会話を拾えるようにした。
『そうなんだ……お父さんは家か。良かったらおじさんが家まで送っていこうか?』
信号で引っかかった交差点で、そんな会話を拾い、またひやりとする。
日葵の返答は一貫していて『ううん、いいの』と拒否を示していた。
『ここでママを待ってるから。ママにむかえに来てもらう』
日葵の応答にわずかに安堵しつつも、いらだつ衝動は抑えられなかった。
鼓動がうるさい。赤信号がなかなか青にならないことに、いらだちが膨れ上がっていく。そして、思ってしまう。



