母自身の経験が影響してか、母は宝瑠に早く結婚してほしいと願っている。“良い人”と結婚して、愛されて、幸せな家庭を築く、それが女の幸せだからと。
古い価値観に縛られるのは結構なことだけど、それを子供にまで押し付けないでほしい。
自分は母のようにはならない。母と同じような道を歩むなんて、まっぴらごめんだ。結婚が望めないなら、産むべきじゃない。そう思い、宝瑠は五年前、お腹の子を手放したのだ。
けれど、その決断こそがまさに“母の呪い”なのかもしれない。
だからこそ、堕胎のことは母に言っていないし、これからも言うつもりはない。
ローテーブルにスマホを置こうとした瞬間、またブルブルと震え出した。
まさかまた母から……?
睨むようにスマホを見やると、そこには知らない番号が浮かんでいた。知らないはずの十一桁だが、下四桁の“0612”に何となく心当たりがあった。
宝瑠の顔に逡巡の色が浮かんだ。しかし、ためらいは一瞬で、すぐに電話に出た。「もしもし?」と少しだけ優しい口調になる。
『……ママ? ひまだけど』
——やっぱり!
宝瑠は大きく目を見張り、息を呑んだ。心臓がドキリと音を立てる。
「ひまちゃん……? どうしたの?」
『……うん』
沈んだ声で返事をする日葵の背後からは、ざわざわとした話し声が漏れ聞こえてくる。風の音に紛れて数人の子供の甲高い声が聞こえる。また外からかけてきているのだ。
古い価値観に縛られるのは結構なことだけど、それを子供にまで押し付けないでほしい。
自分は母のようにはならない。母と同じような道を歩むなんて、まっぴらごめんだ。結婚が望めないなら、産むべきじゃない。そう思い、宝瑠は五年前、お腹の子を手放したのだ。
けれど、その決断こそがまさに“母の呪い”なのかもしれない。
だからこそ、堕胎のことは母に言っていないし、これからも言うつもりはない。
ローテーブルにスマホを置こうとした瞬間、またブルブルと震え出した。
まさかまた母から……?
睨むようにスマホを見やると、そこには知らない番号が浮かんでいた。知らないはずの十一桁だが、下四桁の“0612”に何となく心当たりがあった。
宝瑠の顔に逡巡の色が浮かんだ。しかし、ためらいは一瞬で、すぐに電話に出た。「もしもし?」と少しだけ優しい口調になる。
『……ママ? ひまだけど』
——やっぱり!
宝瑠は大きく目を見張り、息を呑んだ。心臓がドキリと音を立てる。
「ひまちゃん……? どうしたの?」
『……うん』
沈んだ声で返事をする日葵の背後からは、ざわざわとした話し声が漏れ聞こえてくる。風の音に紛れて数人の子供の甲高い声が聞こえる。また外からかけてきているのだ。



