『今いないってことは、やっぱり結婚は三十代になっちゃうのねぇ。そうなると高齢出産になるし、心配だわ。早いとこ身持ちを固めたほうがいいわよ、出会いがないならお母さんのツテでいい人探すこともできるけど』
「いらないから、そういうの。別にしたけりゃするし、それに」
自分は結婚してないくせに——。
言ってはいけないひとことが、思わず喉からこぼれそうになった。
宝瑠は口をつぐみ、きゅっと唇を噛み締めた。
『それに……? なに、じゅえちゃん』
「なんでもないっ、ていうか用件がそれだけならもう切るよ?」
『はいはい。全く、親の心子知らずとはじゅえちゃんのことね。体には気をつけるのよ?』
母との会話を早々に切り上げ、大仰なため息をもらした。
出るんじゃなかった。スマホを見つめ、舌打ちをつきたくなってしまう。
宝瑠の母はシングルマザーで、女手ひとつで宝瑠を育ててくれた。母の偉業と言われればその通りなのかもしれないが、母自身が自分で選んだ道だ。
母は妻子ある男性と不倫をし、宝瑠を授かった。相手との結婚は望めなかったけれど、認知はしてくれたそうだ。
母の戸籍に記されていた『父』の欄には、知らない男の名前があった。それが、自分の父親なのだと母から聞かされた。
結婚できなくても、女の幸せは“愛されること”。母はそう自覚し、宝瑠を産んだそうだ。
母は、そういう人だ。
「いらないから、そういうの。別にしたけりゃするし、それに」
自分は結婚してないくせに——。
言ってはいけないひとことが、思わず喉からこぼれそうになった。
宝瑠は口をつぐみ、きゅっと唇を噛み締めた。
『それに……? なに、じゅえちゃん』
「なんでもないっ、ていうか用件がそれだけならもう切るよ?」
『はいはい。全く、親の心子知らずとはじゅえちゃんのことね。体には気をつけるのよ?』
母との会話を早々に切り上げ、大仰なため息をもらした。
出るんじゃなかった。スマホを見つめ、舌打ちをつきたくなってしまう。
宝瑠の母はシングルマザーで、女手ひとつで宝瑠を育ててくれた。母の偉業と言われればその通りなのかもしれないが、母自身が自分で選んだ道だ。
母は妻子ある男性と不倫をし、宝瑠を授かった。相手との結婚は望めなかったけれど、認知はしてくれたそうだ。
母の戸籍に記されていた『父』の欄には、知らない男の名前があった。それが、自分の父親なのだと母から聞かされた。
結婚できなくても、女の幸せは“愛されること”。母はそう自覚し、宝瑠を産んだそうだ。
母は、そういう人だ。



