AI生成でママにされた私は、シングルの年下クズ男子に再構築されています。

 それから十数分が経ち、無事に久々津が到着した。「すみませんでした」と頭を下げ、礼儀正しく「ありがとうございました」とも言われた。電話での無愛想が嘘のようだった。

 喫茶店の会計を済ませ、彼らとともに店の外に出る。久々津が日葵の手を取り、目線を合わせるためにかがんだ際、ふと、女性ものの香水のような匂いが鼻をかすめた。

「ひま、ちゃんと四ノ宮さんに“ありがとう”した?」

 日葵は少し息を呑んだ様子で押し黙り、「しのみやさん?」と父の言葉をなぞった。

「このお姉さん、ママじゃないんだよ。ママにそっくりだけど、違うの」
「……そう、なの……?」

 若干、涙で潤んだ日葵の視線とぶつかり、宝瑠は申し訳なさそうに眉を下げた。「ごめんね」と言い、微かに口角を上げた。

「四ノ宮さん」と、久々津に声をかけられた。

「今後は、このようなことがないようにしますので」

 艶のある瞳を見つめながら、宝瑠はいくらか逡巡し、言い淀んだ。

 日葵のスマホにあった“あの画像”が頭をよぎる。

 どこで手に入れたのか? それとも、久々津本人が作ったものなのか?
気になって仕方がなかった。

 そもそも日葵の実母はだれなのか?
 本当に自分とそっくりな女性なのか?
 実母の本来の写真はないのか?

 赤の他人だと自覚しているものの、あれだけ感情的に母を求める日葵を想うと、自然と浮かび上がってしまう疑問だった。