宝瑠は無意識に姿勢を正した。小野寺の声は落ち着いていたが、その奥にかすかな苦さを含んでいるような気がした。
彼はまず会社の近況を教えてくれた。宝瑠の処分の件で上司に掛け合ったこと。謹慎二ヶ月は重すぎると訴えたのに、方針は変わらなかったこと。
『力になれなくてごめん』
そう言われ、胸の奥がきゅっと締め付けられた。
小野寺はなにも悪くない。それでも謝らせてしまったことが、余計に心苦しかった。
『あと、それと……』
彼が言葉を続ける。
炎上直後、いくつかの取引先がすぐに契約解除に動いたのだが、ただひとつだけ、動きのない企業があったらしい。
『ナミキホールディングスなんだけど』
宝瑠は思わず息を呑んだ。
最大手のナミキホールディングス。宝瑠の炎上騒ぎでレミックスの評判が落ち、株価も下がっている今、契約解除の申し出がないなんて、不思議というか奇妙でしかない。
ここまで無言を貫いている理由が、どうしても思いつかなかった。それほどの信頼関係を結べたわけでもないのに。なぜ?
『四ノ宮が結んだ案件だったよな?』
「……ええ」
小野寺に確かめられ、宝瑠の脳裏にある人物の顔が浮かんだ。
契約の席で立ち会った男性社員、ナミキホールディングス常務の並樹慧弥だ。
穏やかな眼差しと、どこか含みを持った笑み。その印象が、記憶の中で静かに輪郭を濃くしていった。
彼はまず会社の近況を教えてくれた。宝瑠の処分の件で上司に掛け合ったこと。謹慎二ヶ月は重すぎると訴えたのに、方針は変わらなかったこと。
『力になれなくてごめん』
そう言われ、胸の奥がきゅっと締め付けられた。
小野寺はなにも悪くない。それでも謝らせてしまったことが、余計に心苦しかった。
『あと、それと……』
彼が言葉を続ける。
炎上直後、いくつかの取引先がすぐに契約解除に動いたのだが、ただひとつだけ、動きのない企業があったらしい。
『ナミキホールディングスなんだけど』
宝瑠は思わず息を呑んだ。
最大手のナミキホールディングス。宝瑠の炎上騒ぎでレミックスの評判が落ち、株価も下がっている今、契約解除の申し出がないなんて、不思議というか奇妙でしかない。
ここまで無言を貫いている理由が、どうしても思いつかなかった。それほどの信頼関係を結べたわけでもないのに。なぜ?
『四ノ宮が結んだ案件だったよな?』
「……ええ」
小野寺に確かめられ、宝瑠の脳裏にある人物の顔が浮かんだ。
契約の席で立ち会った男性社員、ナミキホールディングス常務の並樹慧弥だ。
穏やかな眼差しと、どこか含みを持った笑み。その印象が、記憶の中で静かに輪郭を濃くしていった。



