翌朝、まだ空は薄青く、カーテンの隙間から細く光が差し込んでいた。

 宝瑠は静かに目を覚まし、枕元に置いたスマホにそっと手を伸ばした。午前6時10分。昨夜眠ったのが23時過ぎだったから、七時間は眠れただろう。

 小さな吐息をつき、ゆっくりと体を起こした。

 隣のベッドでは、日葵が胸を上下させ、規則正しく寝息を立てている。天喜は壁を向いて横になっていた。かすかに聞こえる寝息から、彼もちゃんと寝ていると感じられた。

 天喜の背中をじっと見ていると、狂おしいほどの愛情が湧いてくる。彼の温もりを求めて、うっかり身を寄せたくなってしまう。

 宝瑠はわずかに高鳴りだした胸に手を当てて、また息をついた。静かに深呼吸をしてからベッドを抜け出した。

 二人を起こさないよう、洗面台に立ち、顔を洗おうと思った。

 極力物音を立てないように配慮し、洗顔を済ませる。鏡に映った自分を見つめ、顔を拭ったタオルに吐息を吸い込ませた。

 昨日のことが、まだ胸の奥でくすぶっている。

 天喜に腕を引かれ、抱きしめられたときの感触と匂いが、静かに五感へ蘇る。眠る直前まで、何度も頭の中で反芻していた。

 あのまま身を離さずに、キスしてほしかった。そんな妄想までしていた。