出会ったばかりの彼を思い出すと、違和感ばかりが募った。あのころの天喜ならこんな失敗を気にも留めず、「まっ、こんなこともあるか」と言って開き直っていたはずだ。なんなら、「一緒に寝る?」と宝瑠を誘っていたかもしれない。
ふいに天喜のため息が空気を震わせた。
「とりあえず。俺とひまが同じベッドで寝るとして。宝はそっちのベッド使って?」
「……わかった」
「あと」と続け、天喜が宝瑠の隣に周り、ベッドの淵に手をおいた。
「ひまが落ちると危ないから……ベッド、寄せてもいいか?」
彼の艶のある瞳が、一瞬だけ宝瑠へ向けられ、また逸らされた。
「……あ、うん」
たったそれだけのことで、心臓が大きく波打った。天喜が同じように、自分を女性として意識しているのが伝わったからだ。
急に居た堪れなくなり、宝瑠はベッド脇のテーブルに視線を逃がした。そこに置かれた黒いファイルを手に取り、無意味にページをめくる。厚紙の上には館内の施設やサービスが整然と並び、活字だけがやけに冷たく目に映った。
「ここ、大浴場もあるらしいわよ? 天喜……先に入ってくる? ひまちゃんは私が見ておくから」
「……いや。いいよ」
素っ気なく返事をしながら、天喜は運び入れたキャリーケースを開けた。中から室内着と、翌日に着る服を出している。
ふいに天喜のため息が空気を震わせた。
「とりあえず。俺とひまが同じベッドで寝るとして。宝はそっちのベッド使って?」
「……わかった」
「あと」と続け、天喜が宝瑠の隣に周り、ベッドの淵に手をおいた。
「ひまが落ちると危ないから……ベッド、寄せてもいいか?」
彼の艶のある瞳が、一瞬だけ宝瑠へ向けられ、また逸らされた。
「……あ、うん」
たったそれだけのことで、心臓が大きく波打った。天喜が同じように、自分を女性として意識しているのが伝わったからだ。
急に居た堪れなくなり、宝瑠はベッド脇のテーブルに視線を逃がした。そこに置かれた黒いファイルを手に取り、無意味にページをめくる。厚紙の上には館内の施設やサービスが整然と並び、活字だけがやけに冷たく目に映った。
「ここ、大浴場もあるらしいわよ? 天喜……先に入ってくる? ひまちゃんは私が見ておくから」
「……いや。いいよ」
素っ気なく返事をしながら、天喜は運び入れたキャリーケースを開けた。中から室内着と、翌日に着る服を出している。



