天喜は焦って、また段ボールの寝床に突っ伏した。靴音がする方向に背を向け、じっとしていた。
靴音は天喜の背後でぴたりと止まった。
「……悪いな、少年」
男性の声が聞こえて、わずかに肩が震えた。
「水を忘れた」
落ち着きのある、穏やかな声だった。
「ここに置いておくぞ」
コト、と音が聞こえた。後ろにあるお盆の上に、コップが載る気配がした。
天喜は振り返った。起きているのはとっくにバレている、それならさっさと水をもらおうと思った。さっき咽せたせいで喉の違和感は未だに続いていた。
天喜は起き上がり、グラスの水を一気に飲み干した。すぐそばに男性が立っているのは知っていたけれど、構わなかった。
もし無銭飲食を咎められたら、そのときはそのときだ。逃げればいい、そう思っていた。
「……なぁ、少年」
男性がその場に腰を落とし、ゆっくりとした口調で天喜に言った。
「悪いことは言わないから、中で寝ていけ。そんなとこで寝ると凍え死ぬ」
天喜は空になったグラスから、目の前の男性に視線を移した。四十代半ばぐらいの、どこかワイルドな雰囲気のある男性だった。口髭と顎髭が粋で似合っている。
男性は天喜の顔をじっと見ていた。無表情のまま、天喜からグラスを受け取り、小さく息を吐いた。
「その頬の怪我も……ちゃんと消毒してやる」
靴音は天喜の背後でぴたりと止まった。
「……悪いな、少年」
男性の声が聞こえて、わずかに肩が震えた。
「水を忘れた」
落ち着きのある、穏やかな声だった。
「ここに置いておくぞ」
コト、と音が聞こえた。後ろにあるお盆の上に、コップが載る気配がした。
天喜は振り返った。起きているのはとっくにバレている、それならさっさと水をもらおうと思った。さっき咽せたせいで喉の違和感は未だに続いていた。
天喜は起き上がり、グラスの水を一気に飲み干した。すぐそばに男性が立っているのは知っていたけれど、構わなかった。
もし無銭飲食を咎められたら、そのときはそのときだ。逃げればいい、そう思っていた。
「……なぁ、少年」
男性がその場に腰を落とし、ゆっくりとした口調で天喜に言った。
「悪いことは言わないから、中で寝ていけ。そんなとこで寝ると凍え死ぬ」
天喜は空になったグラスから、目の前の男性に視線を移した。四十代半ばぐらいの、どこかワイルドな雰囲気のある男性だった。口髭と顎髭が粋で似合っている。
男性は天喜の顔をじっと見ていた。無表情のまま、天喜からグラスを受け取り、小さく息を吐いた。
「その頬の怪我も……ちゃんと消毒してやる」



