「返事……出した覚えないのに。なんで来ちゃうかな」

 彼女はうつろな瞳で天喜を見つめ、ため息をついた。

「もう会いに来なくていいからって……私、天喜くんに言ったはずだけど?」

 彼女は口を尖らせ、拗ねた表情で不満をこぼした。

「わかってる。だから……瑠奈がいいって言うまで来るつもりはなかったんだけどな。このまま待っていても手紙は届かないかもしれないって思ったから。勝手に連れてきた」

 そう言いながら、彼は隣の宝瑠を親指で差した。

「ほんと、勝手だよね。でも……天喜くんらしい」

 彼女はそう言って、疲れたような表情で笑った。

 宝瑠は不安そうに眉を寄せ、目の前に座る彼女にそっと目を向けた。

 そこで初めて彼女と目が合った。彼女は真顔でこちらを見たあと、わずかに口元を緩めた。

「……じゅえちゃん。久しぶり」
「……うん」
「せっかく会えたのに。いきなりこんなので……びっくりしたよね?」

 彼女——瑠奈は、あのころより少し大人びた笑顔を浮かべ、俯きがちに目を伏せた。

「どうせならもっと。ちゃんとした形で会いたかったのに……ごめんね、私。こんなんで」

 そう呟いた瑠奈の表情が、過去のあの子と重なった。

 宝瑠は眉を寄せたまま、小さく首を振る。「謝らないで」とか細い声が出る。