宝瑠は俯きがちに頷き、そっとコーヒーカップに目を向けた。湯気はすっかり消えていた。

「瑠奈はさ。自分の娘に“犯罪者の子供”っていうレッテルを負わせたくなくて。戸籍にも入れてないんだ。だから日葵は俺の戸籍だけに入ってて、母親の欄は不明になってる」

 天喜は手元の鞄を開け、中から一枚の書類を取り出した。戸籍謄本だった。それを広げて見せてくれる。

「……なぁ、宝」

 天喜が落ち着いたトーンで言った。

「瑠奈に会いに行かないか?」
「……え?」

 宝瑠は息を呑み、思わず顔を上げた。

「明日にでも……一緒に北海道へ行かないか?」