瑠奈はあのとき、苦笑しながら「寂しいよね」って聞いてくれてたけど……いったいどんな気持ちで聞いていたんだろう。

 考えると、ツンと鼻の奥が痛くなった。

 天喜は宝瑠の様子を見つめながら、続きを話した。

「瑠奈が殺した三人は……想像がつくかもしれないけど。その親戚家族。義理の両親と義理の妹。
 お腹の中にいる日葵を守ろうとして、はずみで父親を死なせてしまって……パニックになったって言ってた。けど、そこで理性のタガが外れて、母親と妹を手にかけた。その二人に関しては、明確な殺意をもって死なせたらしい」

 殺人という重い内容に触れて、宝瑠はかすかに肩を揺らした。俯きながら、手で口元を覆った。喉奥から熱いものが込み上げて、唇がひくついた。

 感情の渦にのまれる。頬に温かな滴がひとつふたつとこぼれ落ちた。

 泣いちゃいけない。そう思っても、涙はあとからあとから溢れ出てくる。

 瑠奈が殺人を犯すなんて……それこそが信じられなかった。

 あの子はとても優しい子だった。他人の気持ちを思いやり、私の話なんかも、じっと静かに聞いていてくれた。

 攻撃されることはあっても、自分から他者を傷つける行為はしない。平和主義で、性善説なんかを疑いもなく信じているような、そんな子だ。