高校の屋上でお昼を食べていたとき、瑠奈はいつもパンばかり食べていた。小さなあんぱんをゆっくりと咀嚼し、子供みたいに少しずつ齧って食べていた。

 どこか間の抜けた、脱力感のある喋り方をし、食が細くてかなり痩せていて。アルバイトがない日は真っ直ぐ家に帰って、家の手伝いをしていると言っていた。そうしたら「お小遣いがもらえるから」と。

 あの頃の自分は、瑠奈があまりにも食べないから心配になって世話を焼いていた記憶がある。お姉さんぶって、食べもしないのに、多めにおにぎりを買って、「もう少し食べないと」って。お節介ながらも瑠奈に押し付けていた気がする。

「俺と瑠奈が出会ったのは、そんなとき。偶然車で通りかかった橋の上から、瑠奈は飛び降りようとしてた。慌てて俺が止めて……それがきっかけで、縁ができた」

 宝瑠は話を聞きながら、そっと俯いた。

 知らなかった。何もかも。屋上で瑠奈と過ごしていたとき、いつも他愛もない話ばかりしていた気がする。でも、個人的な話題を振るのは、たいてい私からだった。

 私の家は母親だけで、基本ほったらかしで、お弁当もろくに作ってくれない、晩御飯もひとりで食べるのが普通。なにかあればお金は出してくれるけど、家族団欒とか、あんなのフィクションだよ——確か、そんな内容を話していたと思う。