「わーい」と声を弾ませ、日葵がリビングに戻って行く。ビニール袋を漁る音が聞こえた。「パパとママのぶん、れいぞうこにいれておくねー?」。日葵がどこかお姉さん口調で言った。
「冷蔵庫じゃなく、冷凍庫なー!」
「あっ、そうだったー」
ふたりの普通すぎるやり取りを聞きながら、宝瑠は静かに立ち上がった。
「宝……?」
天喜とすれ違い、リビングへと歩いていく。ソファに座る日葵と目が合った。
「ママのアイスもあるよー。パパと同じ、苺のやつ!」
「……うん。ありがとう、ひまちゃん」
宝瑠はふわっと笑みを浮かべて、日葵の部屋に置いた私物を取りに行く。ハンガーラックに掛けた仕事用のスーツを二着下ろし、少し大きめのトートバッグに入れる。
ソファの足元に置いた通勤鞄を掴み、そのまま洗面所へ向かう。棚の上にまとめて置いてある化粧品をトートバッグに詰めた。
宝瑠は二つの鞄を持つと、玄関に並べたパンプスに足を滑り込ませた。
「ど、どこ行くんだよ?」
天喜の声が、やや焦燥を帯びていた。
「おい、宝?」
グイッと腕を掴まれる。
「どこって……帰るのよ」
「……は?」
「私のマンションに。帰るの」
無気力な表情を浮かべる宝瑠を見て、天喜は口を噤んだ。一瞬で状況を把握し、彼は静かに宝瑠から手を離した。
「冷蔵庫じゃなく、冷凍庫なー!」
「あっ、そうだったー」
ふたりの普通すぎるやり取りを聞きながら、宝瑠は静かに立ち上がった。
「宝……?」
天喜とすれ違い、リビングへと歩いていく。ソファに座る日葵と目が合った。
「ママのアイスもあるよー。パパと同じ、苺のやつ!」
「……うん。ありがとう、ひまちゃん」
宝瑠はふわっと笑みを浮かべて、日葵の部屋に置いた私物を取りに行く。ハンガーラックに掛けた仕事用のスーツを二着下ろし、少し大きめのトートバッグに入れる。
ソファの足元に置いた通勤鞄を掴み、そのまま洗面所へ向かう。棚の上にまとめて置いてある化粧品をトートバッグに詰めた。
宝瑠は二つの鞄を持つと、玄関に並べたパンプスに足を滑り込ませた。
「ど、どこ行くんだよ?」
天喜の声が、やや焦燥を帯びていた。
「おい、宝?」
グイッと腕を掴まれる。
「どこって……帰るのよ」
「……は?」
「私のマンションに。帰るの」
無気力な表情を浮かべる宝瑠を見て、天喜は口を噤んだ。一瞬で状況を把握し、彼は静かに宝瑠から手を離した。



