ただ天喜から、ことの次第を説明してほしかった。
天喜は無言で近づき、宝瑠のそばに腰を下ろした。床に散らばった紙束を雑な手つきで拾い集め、すぐそばの、デスクの引き出しへ仕舞っている。
「パパー、ママいたー?」
少し離れたリビングから日葵の声が聞こえる。ぱたぱたと足音が鳴り、天喜が慌てて返事をする。
「いたよ、パパの部屋。かくれんぼしてたみたい」
ひょこっと日葵が顔を覗かせて、ぱっと笑みを咲かせる。
「な〜んだ、おしごと部屋にいたの、ぜんぜん気づかなかったぁ!」
「ほんとになぁ」
天喜は駆け寄ってくる日葵を見て、いつものように「あはは」と笑っていた。娘に愛情を注ぐ父親の顔で。
そんな彼を見ていると、ふいに喉奥から込み上げるものを感じた。胃の奥がキリリと痛み、宝瑠は不信感いっぱいの目で天喜を見つめた。
「普通に、しないでよ……」
「……は?」
天喜の口元がぎこちなく引きつる。笑みが凍りつき、その目には「やめろ」という明確な意志がにじんでいた。
ふいに心の奥でプツッとなにかが切れた気がした。宝瑠は静かに目を伏せ、手元を見つめた。
天喜が娘に気づかれないよう、声の調子を整えて言った。
「ひま、今日だけ特別……。さっき買ってきたアイス、先に食べてもいいよ?」
「えっ、ほんと?」
天喜は無言で近づき、宝瑠のそばに腰を下ろした。床に散らばった紙束を雑な手つきで拾い集め、すぐそばの、デスクの引き出しへ仕舞っている。
「パパー、ママいたー?」
少し離れたリビングから日葵の声が聞こえる。ぱたぱたと足音が鳴り、天喜が慌てて返事をする。
「いたよ、パパの部屋。かくれんぼしてたみたい」
ひょこっと日葵が顔を覗かせて、ぱっと笑みを咲かせる。
「な〜んだ、おしごと部屋にいたの、ぜんぜん気づかなかったぁ!」
「ほんとになぁ」
天喜は駆け寄ってくる日葵を見て、いつものように「あはは」と笑っていた。娘に愛情を注ぐ父親の顔で。
そんな彼を見ていると、ふいに喉奥から込み上げるものを感じた。胃の奥がキリリと痛み、宝瑠は不信感いっぱいの目で天喜を見つめた。
「普通に、しないでよ……」
「……は?」
天喜の口元がぎこちなく引きつる。笑みが凍りつき、その目には「やめろ」という明確な意志がにじんでいた。
ふいに心の奥でプツッとなにかが切れた気がした。宝瑠は静かに目を伏せ、手元を見つめた。
天喜が娘に気づかれないよう、声の調子を整えて言った。
「ひま、今日だけ特別……。さっき買ってきたアイス、先に食べてもいいよ?」
「えっ、ほんと?」



