真っ先にリビングへ走っていった日葵が、天喜に尋ねている。ガサガサと床にビニール袋を置く音が聞こえて、次いで天喜の口から自分の名前を呼ばれる。
「宝ー? どこにいんの?」
やや間を置いて、天喜の仕事部屋が開けられた。
「……なに、やってんの?」
天喜の固い声が背中にべたっと張り付いた。
宝瑠は無言で振り返り、彼を見上げた。
天喜は——これまでに一度も見たことのない、険しい顔をしていた。見開いた瞳が一瞬、床に落ち、そのあと再び宝瑠を見つめ返す。
額が青ざめ、頬の表情筋が不自然に凝り固まっていた。秘密の露見を恐れて、動揺しているのだと、すぐにわかった。
宝瑠は、疲れ果てたような目で天喜を見つめ、ぽつりと呟いた。
「なにこれ……?」
「……え」
「手紙……書いたんでしょ? これ、瑠奈って……っ」
言いながら、わなわなと唇が震えた。
天喜が眉間にしわを寄せ、気まずそうに目を伏せた。
「これ……どういうこと……?」
語尾はかすかに震えていた。普段なら躊躇いもなく、じっとこちらを見てくる天喜が目を合わせようともしなかった。
宝瑠は俯き、下唇を噛んだ。
他人の部屋に勝手に入り、しかも彼が書いた手紙を勝手に読んだ。宝瑠自身、許されないことをしているという自覚はあった。けれど、そんな罪を取り繕う余裕なんて、どこにもなかった。
「宝ー? どこにいんの?」
やや間を置いて、天喜の仕事部屋が開けられた。
「……なに、やってんの?」
天喜の固い声が背中にべたっと張り付いた。
宝瑠は無言で振り返り、彼を見上げた。
天喜は——これまでに一度も見たことのない、険しい顔をしていた。見開いた瞳が一瞬、床に落ち、そのあと再び宝瑠を見つめ返す。
額が青ざめ、頬の表情筋が不自然に凝り固まっていた。秘密の露見を恐れて、動揺しているのだと、すぐにわかった。
宝瑠は、疲れ果てたような目で天喜を見つめ、ぽつりと呟いた。
「なにこれ……?」
「……え」
「手紙……書いたんでしょ? これ、瑠奈って……っ」
言いながら、わなわなと唇が震えた。
天喜が眉間にしわを寄せ、気まずそうに目を伏せた。
「これ……どういうこと……?」
語尾はかすかに震えていた。普段なら躊躇いもなく、じっとこちらを見てくる天喜が目を合わせようともしなかった。
宝瑠は俯き、下唇を噛んだ。
他人の部屋に勝手に入り、しかも彼が書いた手紙を勝手に読んだ。宝瑠自身、許されないことをしているという自覚はあった。けれど、そんな罪を取り繕う余裕なんて、どこにもなかった。



