事実を言えば、付き合ってもいない男性と“ママ契約”というおかしなものを交わし、同居している——その彼に不覚にも恋してしまった、これが正解だ。
けれど、正しい状況を伝えられずに、今の状況を把握するとしたら、「彼氏と同棲」が普通の解釈なのだろう。
……仕方ないか。
宝瑠はまた水を飲み、ふっと口角を上げた。彼女たちとこんな時間を過ごすのも悪くないなと思っていた。
少し前まで、自分がこんなふうに、職場で恋バナのネタになるなんて、想像もしていなかった。誰かと気を許して笑い合ったり、自分のことで冷やかされる日が来るなんて、どこか遠い世界のように感じていた。
ほんとに……変わったんだな、私。
だけど。自分が天喜の“彼女”だなんて。
“結婚秒読み”だなんて。
そんなの、全部勘違い。あり得ないし、叶いそうもない。
胸の奥にあるじわりとした痛みに、宝瑠はそっと目を逸らした。
*
すでに陽は傾き始めているのに、空気にはまだ昼間の熱が残っていた。アスファルトが微かに湯気を上げるような、七月上旬の夕方。
定時を迎え、宝瑠は帰路を辿っていた。
空は澄んで青いままだが、風だけがどこか夜の匂いをはらんでいる。日差しはかすかな優しさを帯び、影を長く伸ばしていた。
けれど、正しい状況を伝えられずに、今の状況を把握するとしたら、「彼氏と同棲」が普通の解釈なのだろう。
……仕方ないか。
宝瑠はまた水を飲み、ふっと口角を上げた。彼女たちとこんな時間を過ごすのも悪くないなと思っていた。
少し前まで、自分がこんなふうに、職場で恋バナのネタになるなんて、想像もしていなかった。誰かと気を許して笑い合ったり、自分のことで冷やかされる日が来るなんて、どこか遠い世界のように感じていた。
ほんとに……変わったんだな、私。
だけど。自分が天喜の“彼女”だなんて。
“結婚秒読み”だなんて。
そんなの、全部勘違い。あり得ないし、叶いそうもない。
胸の奥にあるじわりとした痛みに、宝瑠はそっと目を逸らした。
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すでに陽は傾き始めているのに、空気にはまだ昼間の熱が残っていた。アスファルトが微かに湯気を上げるような、七月上旬の夕方。
定時を迎え、宝瑠は帰路を辿っていた。
空は澄んで青いままだが、風だけがどこか夜の匂いをはらんでいる。日差しはかすかな優しさを帯び、影を長く伸ばしていた。



