見ず知らずの少女を瞬間的に泣かせてしまうなんて。宝瑠は戸惑い、父親に視線を向けた。すみませんという意味を込めて見つめたつもりだが、父親はバツが悪そうに、いくらか顔をしかめていた。

　彼のその目元に既視感を覚える。

　……え？

　ふいに会社で見たビジュアルが想起された。顔にサングラスはないし、ハイライトの入ったウルフスタイルの髪は、ひとつに結んである。しかしながら、服装はそのままだ。

　ハッと息を呑み、佐伯の小声まで思い出していた。

　——「今の……ゲームクリエイターのAkiですよね？」

　再び表情を固めた宝瑠に、ふわりとした温もりが寄せられる。

　少女が宝瑠に抱きついていた。

「ママでしょ？」
「え？」
「ひまのこと、むかえに来てくれたんだよね？」
「……えっと？」

　こちらを見つめた少女は、頬に涙のつぶを流していた。

「ママっ、ずっとずっと、会いたかったんだよっ。もうぜったいぜったい、はなさないから……っ」

　えぇっ……！？？

　困惑した瞳のまま、再び父親のAkiを見上げると、彼は申し訳なさそうに微笑んでいた。