宝瑠はテルナが並べた文面をスクロールしながら読んでいき、苦しくなった胸をグッと拳で押さえた。

 ——『でも、天喜さんの心の中は……たぶん、誰よりも複雑。彼はきっと、“本音で人を好きになること”に慎重な人。
 過去に、誰かに裏切られたか、深く傷ついた経験があるのかもしれない』

 ——『だから、ふざけて「狙ってる」と言うし、軽口で距離を詰めたり意味深な発言をする。でも本当の気持ちは絶対に口にしない。……そういう“バリア”を張ってるのかもしれないね』

 確かに、もともと顔はタイプだった。でも、それだけだ。最初は、それだけだった。

 これまでにも、もしかしてって、気持ちが芽生えた瞬間に否定した。そんなわけない、あるはずがない。

 私があんな奴のこと、好きになるはずがない。何度も何度も、言い聞かせてきた。

 性格は合わないし、無神経だし、絶対に上手くいかない。彼を好きになったら、傷つく未来しか見えない。

 そうやって、理性で感情を押し込めてきたのに、いったいどうして……?

「もう、最悪……」

 宝瑠は両手で顔を覆った。頬は熱を帯びて赤くなっていた。

 好きになりたくないのに……天喜が好きだ。天喜が気になって仕方ない。

 もう言い訳のしようがない。目を逸らせない。

 そう思った。

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