やや茶色がかった、少女の絹のようなポニーテールが風になびく。少女は折り紙で作った成果を見せていた。父親を見上げ、学校で学んだその日の出来事をつたない言葉で嬉しそうに語っている。それに対して、父親の口調は優しく、愛情に満ちている。

 ああいうの、いいなぁ。理想的だなぁ。

 宝瑠は知らず胸の内が温かくなるのを感じ、口元を緩めた。

 ふいに前方から突風が吹いた。

「あっ、ひまのかざぐるまがっ!」

 風は少女の手から折り紙を奪い取り、宙を舞わせた。威力をなくした折り紙が宝瑠の足元へひらりと舞い落ちる。

 宝瑠はそこで立ち止まり、かがんで拾い上げた。水色の折り紙で作った風車だ。

「すみません」と父親が声を上げる。「それ、ひまの」と少女が駆け寄って来る。

「はい」

 しゃがんだ体勢で風車を差し出すと、少女は宝瑠の手元から視線を上げた。

「ありが………」

 そこで少女の言葉が詰まる。

 ……うん?

 少女が宝瑠の顔をジッと見つめて、言葉をなくしている。丸い瞳を大きく見開き、しだいにそれが潤んでいく。小さな唇が震え、何か言葉を発しようとしている。

 宝瑠はきょとんとした表情から一転、慌てふためいた。どうしよう、と一瞬でパニックになる。

 私、なにか……恐い顔でもしてた??