宝瑠は若干唇を尖らせながら、エントランスに向かって歩いて行く。浮かない顔をしつつも、佐伯もそれに続いた。
「けど……今日、小野寺先輩と同居とか、同棲とか……そんな話してませんでした?」
佐伯の声を聞き、宝瑠の頬はたちまち赤くなった。佐伯は、「え」と目を丸くする。
「ちがっ、それは……」
「四ノ宮チーフ……もしかして、彼氏、ですか?」
「そんなんじゃなくて」
しどろもどろに言葉尻を濁していると、ふいに宝瑠の鞄の中でスマホが鳴った。着信音の長さから「電話ですか?」と佐伯が察した。
出ることを勧められて、画面に目を落とした。思った通り、天喜からだ。
仕方なくディスプレイを指でなぞった。「もしもし?」と応える声が、少しだけくぐもって出てしまう。
『宝、そろそろ残業終わりそう?』
「あ、もう終わってて。今、会社出たところ」
『そっか。じゃあそろそろ夕飯の仕上げするし、風呂も追い焚きしておくな?』
「うん、ありがとう」
じゃあ、と言い添えて電話を切る。
電話の最中、ずっと視線を感じていた。佐伯が無言でこちらを見ている。責められているわけでもないのに、なぜか目を合わせられなかった。
彼氏でもない人と同居しているなんて……いったいどう説明したらいいのか、考えあぐねてしまう。
隣を歩く佐伯が、ぽそっと呟いた。
「彼氏と同棲、ってわけですね」
「けど……今日、小野寺先輩と同居とか、同棲とか……そんな話してませんでした?」
佐伯の声を聞き、宝瑠の頬はたちまち赤くなった。佐伯は、「え」と目を丸くする。
「ちがっ、それは……」
「四ノ宮チーフ……もしかして、彼氏、ですか?」
「そんなんじゃなくて」
しどろもどろに言葉尻を濁していると、ふいに宝瑠の鞄の中でスマホが鳴った。着信音の長さから「電話ですか?」と佐伯が察した。
出ることを勧められて、画面に目を落とした。思った通り、天喜からだ。
仕方なくディスプレイを指でなぞった。「もしもし?」と応える声が、少しだけくぐもって出てしまう。
『宝、そろそろ残業終わりそう?』
「あ、もう終わってて。今、会社出たところ」
『そっか。じゃあそろそろ夕飯の仕上げするし、風呂も追い焚きしておくな?』
「うん、ありがとう」
じゃあ、と言い添えて電話を切る。
電話の最中、ずっと視線を感じていた。佐伯が無言でこちらを見ている。責められているわけでもないのに、なぜか目を合わせられなかった。
彼氏でもない人と同居しているなんて……いったいどう説明したらいいのか、考えあぐねてしまう。
隣を歩く佐伯が、ぽそっと呟いた。
「彼氏と同棲、ってわけですね」



