AI生成でママにされた私は、シングルの年下クズ男子に再構築されています。

 部下たちがきちんと定時で退社できるように、「お疲れ様」と声をかけて大っぴらに出て行き、そっと戻ってくる。これが宝瑠なりのやり方だった。

 宝瑠は席に戻り、静かに椅子を引いた。スリープ状態だったPCにログインし、引き出しから手帳を取り出す。

 午後の会議で取った走り書きのメモをめくりながら、ため息をひとつこぼす。議事録の清書は、できれば今日のうちに済ませておきたかった。熱の残るうちに書いてしまう方が、細かいニュアンスまで拾える。

 手帳の横にコーヒーのペットボトルを置き、ディスプレイに開いたワードファイルを見つめた。黙々と手を動かすには、うってつけの時間だった。

 今日残業になることは、あらかじめ天喜にラインしていた。彼からの返信はいつも通りの速さで、【何時ごろ帰ってくる?】と尋ねられた。

 仕事の量からして、一時間もあれば終わるので、そう返事をした。

 時計を見て、午後七時半には彼のマンションへ帰れるだろうと見積もった。

 宝瑠は最後の一文を打ち終え、ふっと息をついた。

 ワードファイルを保存して閉じ、背もたれに身を預ける。

「……よし、終わった」