気づいたときには、そう呟いていた。背筋に軽く電気が走るような感覚がした。
「やだっ、冴えてるじゃない、小野寺くん!」
言いながら、宝瑠は隣の小野寺をバシッとはたく。「イテッ」と彼が苦笑を漏らした。
「小野寺くんの言う通り……私自身が納得するために、やっぱり探してみようと思う、日葵ちゃんのお母さん」
「うん。言う言わないは別にしてもさ……その方が四ノ宮としても、覚悟が決まるんじゃない?」
「……覚悟って」
小野寺はわざとらしく咳払いをして、にやりと口元を緩めた。
「久々津さんとの同居……いや、同棲か」
「ちょっと……っ!」
再び赤くなった宝瑠を見て、小野寺が揶揄した顔つきで笑った。
カフェスペースで仲睦まじく話す宝瑠と小野寺を、部下の佐伯が遠目に見つめていた。彼は不安そうに眉を寄せ、やや躊躇してから踵を返し、立ち去った。
*
早く帰りたい日に限って、残業になるのよね……。
午後五時四十分。
オフィスフロアにはもう誰の姿もなかった。照明の落ちた空間に、PCのディスプレイだけがぽつんと光っている。
宝瑠はいつものように、定時ぴったりに鞄を持ってエレベーターに乗り、一度オフィスビルを出た。誰よりも先に帰ったように見せかけて、近くのコンビニで十数分だけ時間をつぶす。立ち読みして、ペットボトルのコーヒーを買う。それだけで充分だった。
「やだっ、冴えてるじゃない、小野寺くん!」
言いながら、宝瑠は隣の小野寺をバシッとはたく。「イテッ」と彼が苦笑を漏らした。
「小野寺くんの言う通り……私自身が納得するために、やっぱり探してみようと思う、日葵ちゃんのお母さん」
「うん。言う言わないは別にしてもさ……その方が四ノ宮としても、覚悟が決まるんじゃない?」
「……覚悟って」
小野寺はわざとらしく咳払いをして、にやりと口元を緩めた。
「久々津さんとの同居……いや、同棲か」
「ちょっと……っ!」
再び赤くなった宝瑠を見て、小野寺が揶揄した顔つきで笑った。
カフェスペースで仲睦まじく話す宝瑠と小野寺を、部下の佐伯が遠目に見つめていた。彼は不安そうに眉を寄せ、やや躊躇してから踵を返し、立ち去った。
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早く帰りたい日に限って、残業になるのよね……。
午後五時四十分。
オフィスフロアにはもう誰の姿もなかった。照明の落ちた空間に、PCのディスプレイだけがぽつんと光っている。
宝瑠はいつものように、定時ぴったりに鞄を持ってエレベーターに乗り、一度オフィスビルを出た。誰よりも先に帰ったように見せかけて、近くのコンビニで十数分だけ時間をつぶす。立ち読みして、ペットボトルのコーヒーを買う。それだけで充分だった。



