五年前、宝瑠は元カレとの間に子供を宿した。突然の妊娠に驚いたのは確かだが、仕事を辞めて、このまま家庭におさまっても構わない、そう感じたのも確かだ。
私が母親になる。私は、実母を反面教師にしているから、母のようにはならない、絶対に。そう固く決心もした。
けれども、密かに抱いたライフプランは容赦なく壊された。彼には受け入れられず、結果、堕ろすという決断をしてしまった。
「そろそろ行かなきゃ……」
宝瑠は腕時計に目を落とし、そっと呟いた。コンビニ袋にゴミをまとめ、ベンチのそばに置かれたゴミ箱に捨てた。
公園から現地まで、そう遠くはないし。アポの十五分前には着いてしまうけれど、遅れるよりよっぽどいい。
公園の出入り口へ向かって歩いていると、ちょうど宝瑠の手前を通り過ぎる親子に気がついた。
幼い少女と、若いお父さんだ。
小さな背中にパステルカラーの紫色。ピカピカのランドセルを背負う少女を見つめ、ふと可愛いなと思ってしまう。今月から小学校に通い始めた、新一年生だろうか。
父親と娘という構図も素敵だ。育児は必ずしも母親がやらなければいけない、という価値観はもはや古い。
私が母親になる。私は、実母を反面教師にしているから、母のようにはならない、絶対に。そう固く決心もした。
けれども、密かに抱いたライフプランは容赦なく壊された。彼には受け入れられず、結果、堕ろすという決断をしてしまった。
「そろそろ行かなきゃ……」
宝瑠は腕時計に目を落とし、そっと呟いた。コンビニ袋にゴミをまとめ、ベンチのそばに置かれたゴミ箱に捨てた。
公園から現地まで、そう遠くはないし。アポの十五分前には着いてしまうけれど、遅れるよりよっぽどいい。
公園の出入り口へ向かって歩いていると、ちょうど宝瑠の手前を通り過ぎる親子に気がついた。
幼い少女と、若いお父さんだ。
小さな背中にパステルカラーの紫色。ピカピカのランドセルを背負う少女を見つめ、ふと可愛いなと思ってしまう。今月から小学校に通い始めた、新一年生だろうか。
父親と娘という構図も素敵だ。育児は必ずしも母親がやらなければいけない、という価値観はもはや古い。



