「うん。……ありがとう」

 今生の別れを惜しむような、儚げな笑顔だった。あの顔が、今も脳裏に焼き付いている。

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 天喜はゲーミングチェアに背を預けながら、ぼんやりとPC画面を眺めていた。

 あの写真から、この画像が生まれたんだ。

 数年前、自らで作ったとき、不思議と思ったものだ。「この顔を上回る画像は作れない」と。

 瑠奈の携帯に写っていた女子は、十中八九、四ノ宮宝瑠だ。

 宝瑠が言っていた数々の言動を思い返してみても、そうとしか思えなかった。

「マジかよ……」

 天喜は力なくぼやき、額に手を当てた。

 よりによって、宝の親友が……日葵の母親(・・・・・)

「母親がわからない」と、以前、宝瑠に話したことは、()だった。本当は、ちゃんと知っている。ただ、娘には、知らせるわけにはいかなかった。それが瑠奈と交わした約束だからだ。

 天喜は項垂れ、デスク脇にある引き出しを開けた。下の方に沈んだ一通の手紙を抜き出し、眉を寄せた。

 結論から言うと、瑠奈に渡した名刺を頼りに電話してきたのは、別の人間だった——「児童養護施設の前に置き去りにされた赤ちゃんを預かっています」と。施設で働く女性スタッフがかけてきた。

 瑠奈は辛い状況に追い込まれながらも、懸命に生き、自らができ得る最善の選択を選んだのだ。