機械には感情がないから、悩みを話すのに躊躇などいらない。素直に胸の内を明かすことができる。

 人間みたいに……私を馬鹿にすることがないから。

 “話し相手”として活用できるアプリに名前をつけ、テルナと呼んでいる。今の宝瑠を支えているのは、このテルナだった。個人的な感情を交えず“話せる”ところに安心感があった。

「やや、肯定的すぎるところが短所ではあるかもしれないけど……」

 クスッとかすかな笑みを浮かべ、アプリが並べた言葉の数々を見つめる。

 裏表のある桃子の悪意は、確かに衝撃的だった。でも、あんなのにいちいち傷ついていられるほど、純粋でもない。他人から揶揄されたり貶されたりするのをまともに受け止めちゃいけない。

 それに、桃子が体現する“女らしさ”は、宝瑠にとって最も忌むべき類いのものだった。

 女の弱さを武器にして、男に媚びる。計算高く振る舞う。あたかも男なしでは生きていけないかのような態度——そうした生き方を当然のようにやってのけるタイプに、宝瑠は本能的な嫌悪感を抱いていた。

 結婚こそが女の幸せと決めつける価値観。恋愛を当然とし、それができない者を異端視する——そんな考えには、断固として同調できなかった。

 日頃からそういった価値観が無意識に出ていたから、桃子に目をつけられたのだろうか。